毎ブラ361:日本0-4ブラジル

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 仙台のスポパーク松森で行われた国際親善試合、日本×ブラジルを日帰りで観戦。ブラジルは、10番リカルド・アウベスと7番ジェフェルソン・ゴンサウベスの2枚看板をスタメンから外してきた。それでも日本は押し込まれる時間が多かったものの、ディフェンスの陣形をあまり崩さずに対応できていたし、カウンターからCKやFKのチャンスを作るなど、一進一退の展開に持ち込めていたと思う。ある選手も、その時間帯は「フランス遠征で対戦した3ヵ国のほうがやりにくかった」と語っていた。

 だが、前半の途中でリカルドが投入され、さらにジェフェルソンが加わると、ブラジルのリズムが急変する。左右のサイドチェンジを中心とするパス交換と、3人のアタッカーによるめまぐるしいポジションチェンジ。その変化は、「RJコンビ」が加わったことだけによるものではない。2008年の北京パラ、2010年の世界選手権、2012年のロンドンパラとトップに君臨し続ける世界王者は、さらなる高みを目指して大きな変革に着手したような印象だ。
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 かつてのブラジルは、S字を描くドリブルで敵の守備網をすり抜け、ゴールに近いエリアまで侵入してからシュートすることが多かった。だが世界のブラインドサッカーは全体的に守備が分厚くなる傾向が進み、3人、4人でゴール前を固められると、ブラジル選手のテクニックをもってしても、そう簡単にはゴールに迫れない。そろそろ攻撃方法を工夫しないと、このサッカー自体がどんどんロースコア化するような気がしていた。

 それを打開する最初の一歩が、今回のブラジル代表になるかもしれない。昨年から監督に就任したという元代表GKのファビオ・バスコンセロスさんによれば、今日のブラジルが見せた3人のアタッカーによる流動的な連携プレーは、おもにアルゼンチンの堅い守備を破ることを意識して作り上げたものだそうだ。ドリブルではなく、パスによる揺さぶり。リカルドもジェフェルソンも以前よりはるかに球離れが早くなり、盛んにボールを走らせる。そして、パスを受けてからワントラップでの素早いシュート。シュートレンジは以前よりゴールから遠くなったように思うが、そのぶん、シュートのパワーとスピードが増したように感じた。

 RとJが1点ずつ決めて、前半は0-2。後半は、まずリカルドの強引なシュートが2人のDFとGK安部の股間を抜けて0-3。「RJ」がベンチに下がった後も、11番グレドソン・バホスがFKから左足で凄まじいシュートを決め、0-4でタイムアップとなった。日本代表の成長だけでなく、ブラインドサッカーという競技自体の成長も楽しみにしている私としては、あたらしいスタイルの攻撃を見せてくれたブラジルチームに敬意を表したい。正直、見ていて興奮した。
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 とはいえ、3人で攻めるやり方はリスクも大きそうな印象。パス回しのパターンはそう多くないので、横パスを読まれてカットされれば、たちまち危険なカウンターを受けるだろう。実際、今日の日本はドリブルでブラジル陣内に攻め込むシーンも少なくなかった。優秀なボールハンターとして中盤に君臨していたセベリーニョ・シウバが今回はメンバーから外れており、これがどこかでセレソンの弱点となるかもしれない。監督によれば、怪我+練習に臨む姿勢がよくないことで外したとのことなので、そのへんはチャンピオンチームの厳しさを感じさせる話ではあるが。

 0-4で負けたとはいえ、日本にとっても有意義な一戦となったと思う。ブラジルのバスコンセロス監督もリカルドも、試合後の囲み取材で「日本の守備力の向上」を感じたと語っていたが、これは決して社交辞令ではないだろう。日本守備陣は単騎のドリブル突破にはきちんと対応できており、リカルドやジェフェルソンを自由にさせなかった。その点は大きな自信になったのではなかろうか。

 また、終わったばかりのアジアの大会から世界大会へギアチェンジを図る上でも、このタイミングでブラジルとやれたのは大きい。これ無しでいきなりパラグアイと対戦したら、そのパワーやスピードに慣れるまでに時間がかかったかもしれない。しかし今日のブラジルを体感しておけば、どこと当たっても困惑することはないだろう。そういうことのためのテストマッチである。スコアや勝敗に一喜一憂するのは、今ではない。
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by deepriver1964 | 2014-11-10 00:03