毎ブラ027:ヤフー知恵袋におけるブラサカ

 日本選手団は、今日の午前中、無事に欧州遠征から帰国したようだ。かなりの強行軍だったのでみんなクタクタだと思うけど、大きな怪我があったという話は聞こえてこないので、とりあえず安心した。私は彼らが出国した日からずっと風邪で体調ボロボロだけどね。「一緒に行ってたら大迷惑だったわよね」と妻に言われたが、まあ、黙って頷くしかない。

 さて今日は、ふとした拍子に「ヤフー知恵袋にはブラインドサッカーに関してどんな質問が存在するか」が気になって、ちょっと調べてみたのである。いくつかあって面白かった。ネット上では匿名発言の是非が問題になることがよくあって、たしかにケシカランと思えることも少なくないわけだが、障害者スポーツの分野って発言がキレイゴトになりがちなので、「匿名で投げかけられる素朴な疑問」にはそれなりの存在意義があるように感ぜられたのだった。そのうちのひとつが、コレである。

<ブラインドサッカーでアイマスクをするのはなぜですか?見えないのにアイマスクをつけさせられるのは屈辱ではないのですか?>

 これは考えたことなかった。そんなふうに考える人もいるのかー、と、意表を突かれた感じ。とくに補足のところに書かれた「健常者も混じってプレーしてプレーに差が出てもいいじゃないですか。それを平等にするためにアイマスクをつけるというのが理解できません」という部分は、いまいち文意が不明瞭なので質問者の言いたいことをちゃんと理解しているかどうか怪しいけれど、逆に「えっ、えっ、な、なんでそう思うの?」と聞き返したくなる。しかしそれがわからないのは私がこの競技の近くにいるからで、もしかしたらこういう感覚は広く共有されているのかもしれないので、この人が何に苛立っているのかをちゃんと知りたいと思いました。

 で、ベストアンサーの人はひょっとしたら関係者かもしれないのでアレなんだけど、こちらもどうしてこういう答え方をするのかがちょっと謎。「その根底には視覚障害と一口に言ってもレベルが様々だから条件を一緒にするというのはもちろんありますが」って、むしろそれがメインでしょう。それを淡々と答えればよいと思うんだけどなぁ。

 とはいえ、それを理解させるには、視覚障害についてそれなりに詳しく説明しなければならない。「視力に差があるからですね 完全に見えない人や 少し見える方もおいでますからね」と妙な日本語で答えている人もいるが、これはかなり誤解を招く表現だ。B1クラスは「全盲から光覚まで」であって「弱視」はNGだが、「少し見える方」だと弱視を連想する人も多いだろう。さらに、視力が0.01未満の「指数弁」や「手動弁」と「光覚」のあいだにどれだけ明確な線が引けるかという問題もあったりする。どうしたって「グレーゾーン」の選手は出てくるので、やはりアイマスクとアイパッチで(少なくとも試合中は)条件を揃える必要があるわけだ。

 とはいえ質問者はどうやら「条件を揃える必要なんかない」と考えているようなので、これでは納得しないかもしれない。たしかに、スポーツで「どこまで条件を揃えるか」はかなり厄介な問題だ。完全に公平にはできないとも言える。柔道やレスリングの体重別をどこで線引きするのかについて完全に合理的な判断基準はおそらく存在しないだろうし、100m走は「足の長さ別」にしないと不公平だ!という意見だってまったく無茶苦茶なものとも言えない。そんなわけなので、この質問はあんがいシリアスな問題を含んでいるのだった。「物事をフェアにやるのはなかなか難しい」——これは私が障害者スポーツから学んだことのひとつなのである。(以下次号)
by deepriver1964 | 2013-12-10 20:01