【毎ブラ番外編】アジア選手権後にFBで書いたこと

 アジア選手権で日本のグループリーグ最下位が決まってから昨年末までに、Facebookで公開範囲を限定して書いていたことを、時系列で並べました。広範な議論の材料になれば幸いです。

◇今ちょっと頭に血がのぼってるので、あれこれと詳しく感想を書くのはやめておきますが、3年前に世界の6位までいったブラインドサッカー日本代表が、アジアの5位以下に転落し、世界選手権に出場さえできなくなったのは、とてつもなく残念で悔しいことだとだけ申し上げておきます。(2017/12/14)

昨夜のテレビ朝日『報道ステーション』で放送されたブラインドサッカーの特集を某所で見た。世間的には「元JリーガーがGKなのか!」というニュースバリューがあるんだろうけど、アジア選手権のグループリーグで最下位に沈み、世界選手権出場を史上初めて逃すというきわめて深刻な痛恨事が起きた日の夜にコレかよ…というのが正直なキモチ。初戦の中国戦では正GKが出場したことには触れず、2戦目で「なぜこの大事な試合でセカンドGK先発?」と首をひねった関係者が少なくない(要は「誰が見ても当然の起用」ではなかった)ことも無視して、あたかも彼がレギュラーであるかのように見せる内容だったことに、苛立っている関係者も多いだろう(実際そういう声は私のところにも届いている)。

というわけなので、何が言いたいかというと、友達がブラインドサッカーに関わっているからといって、「テレビで見たよ!すごいね!」などと無邪気に報告すると、「ああ、うん、まあね」という苦々しい反応になることもあるので気をつけましょうね、ということかな(苦笑)。「好意的な」マスコミ報道を、すべての関係者がどれもこれも手放しで歓迎しているわけではありません。

ていうか、2戦目も元Jリーガーが出場しなかったらあの特集どうするつもりだったんだろうテレ朝は。(2017/12/15)

◇日本代表が過去最低の5位に沈んだブラインドサッカーアジア選手権で、タイ代表が見事3位となり、来年の世界選手権出場権を獲得しました。タイは3年前のアジアパラ競技大会で日本が3-0で下した相手。2年前のアジア選手権は、おそらくは資金難によって出場を辞退したほどお金のないチームです。そのタイに強化の面で追い抜かれたことを、深刻に受け止めています。また、タイチームが資金難などで世界選手権出場を辞退するような事態にならないことを祈ってもいます。(2017/12/17)

「ブラインドサッカーの指導者だけでは勝てない」──2年前、アジア選手権2015でリオ行きを惜しくも逃した後、日本ブラインドサッカー協会は、そう判断して男子代表チームの大改革を断行しました。代表チーム部長以下のスタッフは大幅に入れ替わり、新たに指導者陣の中心となったのは、ブラインドサッカーのクラブチームには所属しない、外部から招聘されたサッカーなどの専門家の皆さんです。そこから「2点取られても3点取って勝つチーム」への改造が始まりました。

そのチームが、2年後にどうなったか。先日のアジア選手権2017では、日本ブラインドサッカー史上最低の5位という結果がもたらされました。また、ルール変更でゴールサイズが拡大されたにもかかわらず得点は減り、失点だけが増えています。そして、これまで3大会連続で出場してきた世界選手権の出場権を初めて逃しました。残念ながら、ブラインドサッカーの指導者たちが手がけてきた過去のチームよりも「勝てなくなった」と言わざるを得ません。

協会はこの結果を受けて、自ら行った改革とその成果をどのように評価・総括するのか。いま私がいちばん知りたいのは、それです。2年前はあまり明確な形で総括されず、なぜ「ブラインドサッカーの指導者では勝てない」と結論づけられたのかも、協会外にいる者には不明でした。日本のブラインドサッカーの将来のために求められる建設的な議論は、協会サイドの具体的かつ明示的な総括から始まると思っています。(2017/12/18)

【日本のブラインドサッカーが大好きな皆様へ】先日の投稿に対して、多くの「いいね・ひどいね・悲しいね」を頂戴しました。どうもありがとうございます。で、協会の総括を待っているだけでは宙ぶらりんな感じになってしまう(そもそも具体的かつ明示的な総括がなされるのかどうかもわかりません)ので、僭越ながら、この2年間、業界内の「声なき声」にじっと耳を傾けてきた者として、ブラインドサッカー日本代表および先日のアジア選手権大会について、いま議論されるべきだと思われる問題点を整理してみました。

1)視覚障害者がプレーするブラインドサッカーの指導を、健常者サッカーの専門家に託したことの是非もしくは功罪。そこには、たとえばフットサルの指導を11人制サッカーの専門家に託すような「ズレ」がなかったのかどうか(※追記:同じ「サッカー族」の競技でも、サッカー、フットサル、ブラインドサッカー、電動車椅子サッカーetc.の指導にはそれぞれ違う専門性があるのではないか、といったような意味合いです)。そもそも2年前に「ブラインドサッカーの指導者では勝てない」と判断した根拠は何か。

2)「2失点しても3得点して勝つ」というハイリスク・ハイリターンな戦術が、現在の代表選手たちの持ち味や能力に合うものだったのかどうか。もし合っていないのだとすれば、いまのブラインドサッカー界では多くの選択肢から「戦術に合う選手」をピックアップするゆとりなどない(たとえばFCバルセロナみたいな育成や補強はできない)以上、「現有戦力の潜在能力を最大限に引き出す戦術」を選択すべきではないのか。

3)アジア選手権では、とある他国のプレスが思わず「トゥー・マッチ」と溜め息をついたほどの大選手団を送り込むだけの資金的な余裕があったにもかかわらず、なぜ選手登録枠を1つ余らせて、フィールドプレーヤーを7名しか連れて行かなかったのか。それが、故障者が出て以降の選手起用を難しくし、とりわけ(結果的に致命傷となった)タイ戦の2失点目の遠因になったのではないか。

4)フィールドプレーヤー8人枠のうちの1つを使えなかったのは、強化指定選手にB1判定を受けていない弱視の選手(国際公式戦に出場できない選手)が多かったからではないか。なぜ、代表歴のあるB1選手の強化指定を外したのか。

5)今回のアジア選手権は、同組の中国とタイの試合を見た翌日に初戦を迎えられるという点では、有利な日程だったと思われる。中国2-1タイという結果から「タイは手強い」「したがって得失点差を考えると中国戦で2点差以上つけられてはいけない」とわかった上で、どのようなゲームプランで初戦に臨んだのか。

6)アジア選手権で選手たちのポテンシャルが十分に発揮されなかったとすれば、その原因は何か。気候やピッチのサーフェスへの対応、大会までのコンディショニングなどに問題はなかったのか。

7)2人のGKの起用法は妥当だったのか否か。

8)どうして、せっかくのマイボールを相手にパスしちゃうんですか?(小並感)

9)史上最高の準備をして史上最低の結果が出たとなると、今後は一体どれだけの準備が必要になるのか。パラリンピックという「戦場」を知るアスリートからは、あの大会の尋常ならざる厳しさについてしばしば聞かされる。2018年の世界選手権に出場できず、(2019年のアジア選手権に出場はしても)「ガチンコのアジア予選」を経ることもないまま2020年を迎える日本チームが、その厳しさに耐えられるだけの強さを身につけるには、これから何をすればよいのか。
 
 ほかにもあるでしょうが、とりあえずこんな感じです。ほとんどは、何年かこの競技と継続的に関わっている人なら誰でも思い浮かべる「素朴な疑問」でしょう。必ずしもすべての問いに明確な答えが出るとは思いませんが、こういったことを明示的な形で議論しないかぎり、日本のブラインドサッカー界全体が足並みを揃えて前を向くことはできないように感じています。たとえ協会、代表チーム、スポンサー、サッカー界、マスコミなどが前を向いたとしても、そこから取り残される関係者は大勢いるに違いありません。

 もし、そのまま2020年を迎えれば、そこで代表が勝とうが負けようが、日本のブラインドサッカー界はバラバラになっているのではないか──そんな危惧が私にはあります。2年前にはあったあの一体感を取り戻してもらいたい。勝てばみんなで喜び、負けてもみんなが納得できる、そんな「おれたちの代表」をつくってもらいたい。そういう一念で、私はこれを書くことにしました。日本のブラインドサッカーが大好きな皆さんのご意見、ご感想、今とにかく言いたいことなど、どしどしお寄せください。もちろん、コメント欄には書きにくければメッセージでもかまいません。もっともっと、「声なき声」を私は聞きたい。それを踏まえた上で、(いまはFB上の友達限定でお話ししていますが)あらためてブログなど書くかもしれません。どうぞよろしくお願いします。(2017/12/21)

◇そういえば、黒田智成選手の代表チームでの背番号は、なぜ今回のアジア選手権では5番ではなかったんだろう。ファンとして、ものすごく寂しかった。「トモさんの5番」は、日本のブラインドサッカーの歴史がしみ込んだ一大ブランドなのに。変更が本人の意思なら尊重するけど、もしそうじゃないなら、5番に戻してほしい。今年のコパアメリカでも相変わらず5番を背負っていたアルゼンチンの名選手シルビオ・ベロと並ぶ「ブラインドサッカー界のエースナンバー」だとおれは思ってます。(2017/12/23)

◇日本相撲協会の理事会のニュース見てると、ついほかのスポーツのことを考えてしまう。反面教師とすべきことはいろいろありそうだなぁ。「結論ありきの理事会」とか。ダメ、絶対。(2017/12/29)

【再び日本のブラインドサッカーが大好きな皆様へ】やはりこう押し詰まってくると、「今年のことは今年のうちに」という気持ちになるものです。この国では年があらたまるといろんなことが何となく水に流されたりもしますし、「書かずに後悔するくらいなら書いて後悔するほうが何倍もマシ」という性分でもあるので、いまブラインドサッカーについて思うところをさらに踏み込んで書いておきます。

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話は2年前に遡ります。2015年11月初旬、日本ブラインドサッカー協会が代表チームの新部長・新監督を発表した後、私はある協会幹部の方に次のような内容の私信を送りました。以下、要約して紹介します。

《発表の内容があまりにも曖昧なため、私の見聞きする範囲だけでも、日頃から支援している人々から少なからず戸惑いの声が上がっています。まず前監督が「辞任」なのか「解任」なのか「再任せず」なのかがわかりませんし、その理由もわかりません。

この人事の重大性を考えると、技術委員会か理事会の名義でのステートメントが必要でしょう。アジア選手権までの4年間をどのように総括し、いかなる理由でこの決定にいたったのかを説明しなければ、支援者の深い納得は得られず、代表チームの新たな船出を後押しする気運も最大化されないように思いますが、いかがでしょうか。

ちなみに数年前、車いすバスケの女子代表チームがパラ出場権を逃したとき、同連盟の強化部長は非常に厳しい自己批判を含む声明を発表していました。その姿勢は、日本ブラインドサッカー協会に足りないもののひとつだと思っております》

これに対しては《何らかの手立てを検討します。少しだけお時間ください。ご提案に感謝します》という丁重な返信を頂戴したものの、残念ながら、とくに善後策は講じられませんでした。それについての弁明や説明もありません。だから私は、2015年12月27日にあの長いブログ(今年を終える前に書いておきたかったブラインドサッカーの現在・過去・不透明な未来)を書いたわけです。そこでは、代表改革のやり方を「粗雑」という強い言葉で非難しました。それに対する反論は見聞きしていません。

そのような改革から2年後に、代表チームがアジア選手権で史上最低の結果を出してしまったのですから、多くの関係者が協会への不信感をますます募らせたとしても当然でしょう。協会が信頼感を取り戻し、日本のブラインドサッカー界がバラバラになるのを食い止めるには、こんどこそ、具体的な総括を行った上で、責任ある立場の方が公式声明を発表し、広範な理解を得られるだけの説明をしなければいけないと私は思います。

もしそこで、2018年以降も代表チーム部をこの2年間と同じ体制で続けるという結論になるのであれば、その理由を広範な理解が得られるように説明するのは容易ではないでしょう。客観的な数字から見れば、「改革する理由」はたくさんあります。いや、改革する理由しか見当たらないと言ってもよいぐらいです。その常識的な判断を覆すには、よほど説得的な形で「改革しない理由」を挙げなければいけません。

その議論のきっかけとしてひとつの仮説を提示するなら、私は「魚住前監督のやり方が間違っていなかったことを証明したのが今回のアジア選手権の結果である」と考えます。無論それについては、いろいろな見方があるでしょう。違うというのであれば、その理由を明確に説明していただきたいと思います。

いささか先回りして申し上げておくと、「いまの代表チームは2020年のメダル獲得が最終目標だから現時点での結果は問わない」という説明は通用しないでしょう。もし、東京パラ前年の2019年アジア選手権でも今回と同等の成績で終わった場合、その時点ではもう改革が間に合わないと思われるからです。大きな試金石となるはずだった2018年世界選手権にも出場できない以上、変えるとすれば今このタイミングしかない。今なら、まだ間に合う。だから、今回のアジア選手権の結果をどう評価するかが重要だと私は考えるのです。

いずれにしろ、このまま何の説明もなしで済ませることは決して許されません。先日、日本ブラインドサッカー協会に与えられた日本PR大賞の授賞理由には、「オープンな情報開示姿勢」も評価の対象として挙げられていました。賢明なる協会の方々が、2年前と同じ間違いを繰り返さないことを私は信じています。(2017/12/30)

by deepriver1964 | 2018-01-04 19:28