「ムトウ杯 ブラインドサッカー北海道オープンカップ2017」に対する疑問

 本日、「ムトウ杯 ブラインドサッカー北海道オープンカップ2017」という大会が開催された。出場は、ナマーラ北海道、free bird mejirodai、ラッキーストライカーズ福岡の3チーム。北海道でこのような大会が実施されるのは、たいへん喜ばしい。私はいちおう道産子なので、個人的な思い入れもある。free bird mejirodaiとラッキーストライカーズ福岡にとっても、試合経験を積む上できわめて価値ある機会だったに違いない。これが単なる親善大会であったなら、手放しで賞賛したいところだ。

 しかし、である。この大会は、3月に開催される「KPMGカップ ブラインドサッカークラブチーム選手権2017」の予選を兼ねていた。本来は、北日本、東日本、西日本の各地域リーグの上位チームに出場権が与えられる大会である。「クラブチーム選手権」なのに外国のナショナルチームが参加する奇妙な大会ではあるが、だからこそ、選手たちは出場権が欲しい。とりわけ今年は世界でいちばん強いブラジル代表チームと対戦できるかもしれないのだから、なおさらその思いは強いだろう。

 ちなみに、地域リーグで出場権を得られなかったクラブにもチャンスは残されている。大会当日に実施される予選を勝ち上がれば、本選に進むことができるのだ。とはいえ、なにしろ本選当日に行われるので、勝ち上がったとしても過酷な連戦になる。だからどのクラブも、地域リーグで上位(東日本リーグは2位まで、北日本と西日本は1位のみ)に入るべく必死で戦っているのである。

 ところが今季、ナマーラ北海道は昨季優勝を果たした北日本リーグにどういうわけか出場しなかった(理由は私が知る範囲ではまったく説明されていない)。したがって残念ながらクラブチーム選手権への出場権は得られない(得ようと思ったら大会当日の予選に出場するしかないはずだった)わけだが、本日のムトウ杯は(JBFAの主催大会ではないにもかかわらず)JBFAの「認定カップ」となり、優勝チームにクラブチーム選手権の出場権が与えられることになった。

 そのような位置づけの大会ならば、正統性を担保できるだけの「権威づけ」が必要であろう。正統性。これ、「正当性」とはちょっと違います。たとえば民主的に定められた手続きにしたがって選ばれた大統領は、どんなに多くの人が「こいつは間違っている」と思っても(つまり「正当性」に関しては議論があったとしても)揺るぎない「正統性」があるわけですね。私はいまそういう話をしている。いちばん強いクラブを決める「選手権大会の予選」なのだから、誰もが納得できる正統な手続きが求められるはずだ。

 だがムトウ杯の出場クラブがどのように選考されたのかは、私が知るかぎり公表されていない。私自身は関係者から経緯を聞いているけれど、ここは公開情報だけで話を進めよう。すると、主催者であるNPO法人セカンドサポート(ナマーラ北海道の運営主体)がfree bird mejirodaiとラッキーストライカーズ福岡を恣意的に選んで招待した、ということになりますよね? 表向きはそうとしか見えない。

 これは、単なる親善大会ならともかく、「チャンピオンシップ大会」の出場権を懸けた大会の正統性を備えているとは言いがたいと思う。そもそもナマーラが北日本リーグに参加しなかったことに関して、納得のいく理由が必要だ。それを受け入れた上で、誰もが「それでよい」と思えるのは「各地域リーグの次点チームを集めて競う」というやり方だろうが、そうはならなかった。

 free bird mejirodaiは誕生したばかりのクラブで、東日本リーグにはまだ参加していない。ラッキーストライカーズ福岡は西日本リーグで優勝を果たし、すでにクラブチーム選手権の出場権を得ている。出場権を持っているチームが「出場権を懸けた大会」に参加するのだから、実にわかりにくい。その福岡がムトウ杯で優勝した場合、クラブチーム選手権の出場権を得るのは準優勝チームだ。

 つまり「予選」としては、実質的にナマーラ北海道とfree bird mejirodaiの一騎打ちだったのである。地域リーグに参加していない2つのクラブが、ここでライバルを上回る成績を残すだけで、クラブチーム選手権に出場できる(ブラジル代表とも戦えるかもしれない!)わけだ。実際には第3試合で福岡と引き分けたナマーラがPK戦に勝って優勝したが、「予選」に関しては、第1試合でナマーラがmejirodaiに勝ち、第2試合でmejirodaiが福岡に負けた時点で決着がついていた。

 上位進出を目指して懸命に地域リーグを戦い、それが果たせず大会当日の予選で本選出場を狙うクラブの選手たちは、おそらく納得いかない思いだろう。私自身、ひとりのブラインドサッカーファンとして、まったく納得がいかない。チャンスを与えられなかったクラブの選手たちはもちろん、このように正統性に疑問を抱かれる形でクラブチーム選手権に出場するナマーラの選手たちも気の毒だと思う。

 余計なお世話かもしれないけれど、ブラインドサッカーの運営に関わるみなさんは(もしこの競技をまっとうな「スポーツ」として育てていきたいのであれば)たとえば高校野球で春の甲子園大会が「選手権」を名乗らず、夏の甲子園だけが「選手権」である理由なんかをお考えになってみてはいかがだろうか。外国のナショナルチームが参加するという時点で、私はクラブチーム「選手権」という大会名称に大きな疑問を抱き、SNS等で違和感を表明してもいた。「今年の日本のクラブチームチャンピオンはブラジル代表です!」って、誰が考えたっておかしいでしょう。スポーツの常識から大きく外れている。

 その上「予選」も、このような納得しがたい形で行われた。もし私が冠スポンサーの担当者だったら、「みっともないので『選手権』を名乗るのはやめましょう」と提案すると思う。「みっともない」とは、別の言葉にすると「ブランドイメージに傷がつく」ということですね。JBFAもブラインドサッカーの「ブランディング」なるものには熱心だと思われるので、イメージに傷がつくような運営は避けたほうがよろしいのではないか。「内輪の論理でナアナアに(時にはアンフェアに)物事を進める人たち」だと世間に思われたら、スポーツ団体としての信用は高まらず、お金も集まらなくなり、結果的には選手たちのためにならないと思うのですがいかがでしょうか?
by deepriver1964 | 2017-01-28 16:55