毎ブラ367b:大会第0日

 さてさて、9時から9時まで12時間で12ヵ国の公式練習を見るという無謀な一日を過ごしたわけである。いろいろあったが、最大のニュースは「日本の川村怜選手の出場停止処分撤回」だ。

 川村は、アジアパラ最終戦の韓国戦でレッドカードを受けたことで、世界選手権で2試合の出場停止を命じられかかっていた。だが昨日のテクニカル・ミーティング(だったかな。各国の監督や審判団などが参加する会議)で、魚住監督が異議申し立て。それがルールならば受け入れるが、ルールをフェアに適用するならば、全出場国の直近の公式戦の正式なスタッツを検証し、川村と同様の選手の有無を確認した上で、もし退場処分を受けた者がいるならば、その選手も出場停止にしなければいけない。そのスタッツを提示できないのであれば、ひとり川村だけがルール適用の対象になるのはアンフェアである——そのような主張だったと私は認識している。

 実にまっとうな主張である。あくまでも「フェアネス」を求めた魚住監督の姿勢に、私は最大限の敬意を表したい。そして、この主張を受け入れ、本日、出場停止処分を撤回した当局の姿勢もひじょうに立派なものだ。正式なスタッツが揃えられないのはダメなところだが、まあ、その弱点を突いた魚住監督の作戦勝ちという面もなくはないだろう。いずれにしろ、日本チームにとっては本当に良かった。彼を2試合も欠くのは、ほとんど気を失いそうになるぐらいの痛手だ。心底、ホッとした。

 各国の練習についていちいち書いている余裕はないが、日本はパラグアイ戦に向けた守備練習に多くの時間を割いていた。選手やスタッフの集中力と一体感と高揚感と士気の高さがビシバシ伝わってくる練習だった。

 ほかで目立ったのは、先日の仙台の試合後にブラジルの監督がライバルとして挙げていたアルゼンチン、中国、スペインの3チーム。アルゼンチンのスピード、中国のテクニック、スペインのシュート力は、いずれも世界チャンピオンにとって脅威となるレベルだと思う。

 ところで会場に建設された特設スタンドは、8年前のアルゼンチン大会とよく似ていた。寒暖の差が激しく、昼間は汗ばむほど暑く、日が暮れると震えるほど寒いのも、あの大会を思い出させる。しかも日本が初戦でパラグアイ、3戦目でフランスと当たるのもあのときと同じだ。

 何度も言うけど、私はあのとき、アルゼンチンが満員の地元観衆に包まれて輝く姿を見て、いつか日本の選手にも同じような経験をしてもらいたいと願っていた。それが、明日、実現するかもしれない。チケットは完売した。あとは、選手たちが持てる力を存分に発揮するだけである。ものすごく楽しみだ。

 大きな国際大会の直前にはいつも同じことを書いているような気もするが、選手たちには、この晴れ舞台で、サッカーをとことん楽しんでほしい。サッカーのできる喜びとありがたみを、全身で表現してほしい。いまの日本で、それをいちばんよく知っているのが、ブラインドサッカーの選手たちだと私は思っている。だから彼らは誰よりも活き活きと楽しそうにサッカーをするのだし、それを見るのが好きだから、私はその現場に何年も足を運んでいる。全力で、明日も楽しそうにサッカーをしてください。
by deepriver1964 | 2014-11-16 02:27